今回は局所類体論の存在定理と呼ばれる局所体上のAbel拡大の分類定理の使い方と、その強さを -進数版のKronecker-Weberの定理
を証明することで見ていく。
目次:
局所体の定義と性質
この節では以下の内容について話す。
- 局所体の定義。
- 局所体 は その整数環の素元 と単数群 により という構造をしている。
局所類体論の存在定理は の指数有限開部分群と 上のAbel拡大が対応するのでここでは の代数構造と位相的な情報が重要になるのである。
上で書いた内容を知っていれば、あるいは認めれば局所類体論の存在定理とKronecker-Weberの定理の証明の流れは追えるはずである。よってもし以下の議論が難しいと感じたり、長い文を読むのが面倒な人は局所類体論の存在定理へと飛んでも大丈夫である。
を代数体、つまり有理数体 上の有限次拡大体とする。ならその代数体の整数環 と呼ばれる の部分環は「任意のイデアルが有限個の素イデアルの積により一意的に表すことができる。」という特徴を持つ。このような環をDedekind環という。これは素因数分解のようなものをイデアルに対して行っていると見れる。よって の0でないイデアル全体はイデアルの積により半群となる。ここで"0でないイデアル"を "0でない の有限生成 -加群" と定義を広げることでイデアルの逆元までを定義に含めることができる。よってこれは群になり、それを と書き分数イデアル群という。
整数の世界ではいろんな整数の素因数分解を考えるように、代数体の世界では整数環のイデアルの素イデアル分解を考える。その為に付値と呼ばれる関数を導入する。
に対し を で生成される -加群つまり分数イデアルとする。この時 の素イデアル分解を
とする(ここで は全ての素イデアルを走るとして、ほとんど全ての、つまり有限個の例外を除いて、 である)。この時 進付値 を
により定める。これは群準同型である。ここで形式的に と置くことで と関数を拡張する。
ここで 上の -進絶対値を
ここで であり と定める。
なら を
で定めればこれは 上の距離になる。
よってこの距離により を完備化したものを とかく。
このように構成される を(標数0の)局所体という。
特に、 素数 に対して の時は と書き -進数という。
と は自然に 上に延長されるのでそれらを再び と と書くとするとこれらもそれぞれ 上の非Archimedes付値と距離になる。よって局所体 をこの距離 による距離空間としても考えることにする。
ここで における整数環のようなものとして
を定める。するとこれは局所環(つまり0でない素イデアルを1つしか持たない)で単項イデアル整域、特にDedekind環であることが分かる。ここで の0でない素イデアルは
という形をしている。
ここで局所体が局所体と呼ばれる所以をみてみよう。
なら
が成り立つ。つまり代数体における分数イデアルの -冪という局所的な情報だけ引き出すことができるので局所体と呼ばれる理由もわかるであろう。
さて、局所体の性質をもう少し詳しくみる。
は0でない素イデアルを1つしか持たないDedekind環なので任意の分数イデアルは -冪で表される。さらに単項イデアル整域なので唯一の0でない素イデアルは素元 を用いて と書ける。以上のことから任意の に対して が存在して
とできる。よって適当な の単数 が存在して と表せる。以上のことから の単数群を と書けば
が分かる。ここで とは で生成される巡回群である。
局所類体論の存在定理
いよいよ局所類体論の存在定理の正確な主張を確認する。
この節では と書いたら付値 による局所体とし、
とする。また局所体上の有限次拡大体もまた局所体であることが知られているので、その有限次拡大体に対しても添え字の の部分を入れ替えることで同様の記号を使う。
Galois拡大 に対しそのノルムを
により定める。
これにより「 上のAbel拡大体を含む適当な体を見つける」という問題は「どんなノルム群にも含まれるような の適当な指数有限開部分群を見つける」というように位相的にも群論的にも考察できるより簡単な対象へと問題を書き換えることができるのである。
よって以降 の部分群について調べる。
とすればこれは1の基本近傍系(つまりどんな1の開近傍も十分大きい が存在して を含む)となる。よって任意の 上有限次Abel拡大体 に対し十分大きい が存在し
となる。
十分大きい をとればこれが成り立つわけだが、そのような の内最小のものは に関する情報を持っている。
以上より の部分群として が持ってこれることが分かったが であったことから は 内で指数有限にはならいないのである。よって対応する類体を考えるには 分の情報をもう少ししぼりたいが の素イデアル分解を考えれば次の定理が分かる。
最後に
参考文献
J.Neukirch, Algebraic Number Theory, Springer